2022年5月8日 主日礼拝

ルカの福音書 1章1~4節
國分広士牧師

1.前文

  • ルカの福音書1-4節は、本文に入る前の前文。現代の書物では前文があるのはごく普通だが、新約聖書中で本文の前に前文がある書物はルカと使徒だけで、両方とも執筆者はルカ。旧約聖書では文書の最初に前文的な記述がある書物がある。(イザヤ 1:1 、エレミヤ 1:1-3など。)また、詩篇の中で前文がある場合は、本文とは区別して記述されている。
  • ルカの前文は、執筆の理由や宛先や方法が記されている。このような前文は他の書物にはないが、他の書物も執筆理由や、想定している読者や、執筆方針などはあったはずだと気づかせてくれる。

2.読者、執筆理由、執筆方針

  • 読者:ルカはテオフィロという人物のために書いている。使徒の働きもテオフィロ宛。テオフィロはこの時点ではまだ求道者。
  • 執筆理由:テオフィロはすでに教えを受けているが、教えが事実かどうか疑っていたらしい。ルカは教えを順序立てて記述することで疑念を晴らそうとした。
  • 執筆方針:「順序立てて」と言われているように、4福音書の中ではルカが最も時系列に沿って記述されている。時系列を確定するには多くの資料が必要。複数の資料で比較しないと時系列通りかどうかは確定できない。ルカは「全てのことを初めから綿密に調べて」いた。執筆に入る前からルカは多くの資料を収集していたのだ。おそらくそれはルカ自身の納得のためだっただろう。自分も色々なことを調べて納得したから、その研究内容を分かち合えば、きっとわかってもらえると思ったのだ。
  • 事件の調査の場合、監視カメラ映像がなかった時代においては、最も重要な資料は目撃証言。目撃者の証言記録による福音書はマルコの福音書で、ペテロの証言をマルコが書いたようだ。ルカはそれをすでに読んでいる。マタイもルカと同時期に、ルカとは異なった視点で福音書を執筆しつつあった。ルカはマリアから聞いたとしか思えない、イエス出生以前の記録を記述している。非ユダヤ人であるルカには特に興味深い証言だったのだろう。それはテオフィロにとっても、作り話ではない事実だと受け止める上で重要な証言だった。

3.執筆の結果

  • ルカでは「尊敬するテオフィロ様」と呼んでいたが、使徒の前文では「テオフィロ様」と簡潔。続きを読みたいという要望があったはずなので、おそらくテオフィロは主イエスを信じたのだろう。
  • ルカが一人のたましいのために努力したことを学びたい。その努力はテオフィロだけでなくその後2000年間、膨大な人々に読まれ信仰に導く大きな結果をもたらしたが、ルカ自身の意識はテオフィロ個人。私たちも自分が直接接することができるのはごく少数の人に限られる。自分が接する人のために尽くすことが最重要である。この人にはどうしたらわかってもらえるだろうかとよく考え、救い主に出会う助けとなるよう、最善の努力で尽くしたい。